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【読書会】彩ふ読書会(東京)2020年1月参加レポート

こんにちは!
先日1/26に行われた、のののさん主催の彩ふ読書会に参加したので、そのときのレポートを書きたいと思います。なんだか、ここのところ毎週のように読書会に参加していますね(笑)

開催者の方の公式のレポートはアップされ次第リンクを貼ります。

記事の中で、課題本の「何者」のネタバレを多少含むので未読の方はお気をつけください。


彩ふ読書会東京地区

彩ふ読書会は、のののさん(通称のーさん)という方が主催している読書会です。のーさん自身は大阪の方で、もともとは大阪を中心に読書会を行っていたそうなのですが、それをもっと広げようということで、現在6拠点(大阪・東京・名古屋・京都・神戸・横浜)で読書会を展開しています。本当に主催者の方の行動力には脱帽する限りです。

この読書会のコンセプトとして主催者が掲げているテーマは「居場所作り」で、私自身がこのコンセプトに強く共感したこともあり、2018年6月より東京地区のサポーターとしてお手伝いさせて頂いております。

今回の参加人数は午前は23人、午後は24人。男女比はほぼ1:1でした。

午前の部「推し本披露会」

今回の推し本披露会は4グループに分けて行われました。僕が参加したのはCグループです。

紹介された本たちはこちら (参加者直筆の紹介文は公式レポートで公開しています。ぜひそちらもご覧ください)

Aグループ f:id:KinjiKamizaki:20200126232058j:plain
Bグループ f:id:KinjiKamizaki:20200126232116j:plain
Cグループ f:id:KinjiKamizaki:20200126232133j:plain
Dグループ f:id:KinjiKamizaki:20200126232151j:plain

今回、僕が紹介した推し本は畑村洋太郎さんという方の『失敗学のすすめ』。僕はこの読書会で紹介する推し本はちょっと笑い要素のある本が多いのですが、今回は珍しく真面目な本です。たまには真面目なところを見せようと思った、というのは建前で、単純にそういうタイプの本のネタが切れてきたというのが本音です(笑)

内容としては、東大の機械系教授である筆者の提唱する「失敗学」についての本です。読んで字の如く、「失敗からいかに学ぶか?」を追求する学問分野であり、この本ではその方法論や具体例について書かれています。僕自身も専門は工学系だということもあり、「失敗から学ぶ」という考え方は頭に入っていたものの、この本を読んで改めてその大事さに気づき、学べるところが多かったので今回紹介させていただきました。

もともと筆者が機械系の方だということもあり、本の前半はいかにも設計や製造に関する話が多いですが、途中からは、経営・組織の話や失敗に学ぶ創造のやり方なども書かれており、その守備範囲は想像以上に広いです。「失敗情報は組織内を上下移動しない」「失敗情報は隠れる傾向にある」「縦割り的な組織ではローカルで生じた変更情報がタイムリーにアップデートされず、それが多くの失敗の要因になる」などの指摘は、仕事をしている方で有れば思い当たる節があると思います。

そう言った状況に対する対抗策としては、「失敗に寛容になる」ことや、むしろ「失敗を奨励すること」が重要であると主張しています。この本自体は15年以上前の本ではありますが、失敗への不寛容が蔓延する現代だからこそ、もう一度ここに立ち戻ってみるのも悪くないかなと思っています。

ここまでの説明を聞いて気づいた方もいるかもしれませんが、その内容がAppleをはじめとした新興IT企業で取り入れられている「デザイン思考」にかなり近いところがあると思います。不完全でもいいから世の中に出してみて、その失敗情報を集めながら洗礼させていく、というプロセスが所謂「デザイン思考」なわけですが、この考え方は上記の「失敗学」にかなり近いものがあるように思います。そういう意味でも、今一度この概念を学ぶ意義は十分にあるように思います。

読書会のレポートとしてはいつになく真面目な紹介になってしまいましたが(笑)、たまにはこういう本を紹介するのも悪くはないかなぁと思った次第です。どうしても、本を紹介するとなるとふざけたくなってしまうのですが、堅くなりすぎない程度には真面目なところも見せていければなと。この前の「メカ・サムライ・エンパイア」みたいな本ばっかりだと、あまりにもあまりにもなので(笑)。

今回のテーブルでは、小説がやや多かったものの、ノンフィクションや動物本など、色々な本が紹介されていて楽しい限りです。そして、先日の名古屋・神戸に引き続き山本文緒さんの本が紹介されるということもあり、なぜだか彩ふ読書会で拠点を超えた山本文緒ブームが起きているようです(笑)。一度も読んだことのない方なので、これを機会に読んでみようかなという気になりました。「恋愛中毒」なんかはタイトルでかなり気になっていたりします。

そして、タイトルが長い「出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと」を紹介していた方の話が非常に興味深かったです。この本自体はSNSなどでよく目にしていて気になっていた本ではありますが、紹介者の方がこの本に影響を受けて実際に色んな人と会うようになったと聞いて衝撃を受けました!もちろん、所謂そっちの出会い系とかではなく、SNSで募集をかけて単純に30分程度お話するとのことでした。何よりも、その行動力に驚きです!本についての話ができるのはもちろんですが、本を手に取ったきっかけや今回のような本を読んで影響を受けた話を聞けるのも読書会の楽しいところですね。

午後の部「課題本読書会」

今回の課題本は朝井リョウさんの著作「何者」です。就活をテーマにした小説で、今回初めて読んでみましたが色々な捉え方ができるような本だっただけに、読書会で参加者の方々と話せるのを楽しみにしていた本です。さすがは直木賞受賞作といったところでしょうか。

前回の横浜の課題本読書会の時の感覚から、課題本で有れば人数多めでも悪くないかなと思ったこともあり、今回は8人×3テーブルという構成です。今回は課題本が課題本だっただけに、話題は尽きず、本当にあっという間でしたね(なんだかんだ、毎回あっという間と言ってる気もしますが(笑))。

まず、1人づつ自己紹介をした時に感じたのが、本当に色々な方が参加しているなぁということです。登場人物たちと同じような就活を体験した方もいれば、現在転職中の方、僕は理系院卒でサワ先輩に近いポジンションでしたし、まだ就活を経験していない学生の方、この小説のような形での就活をせずに仕事をしている方やお年を召していて就活はもうずいぶん昔のことだとおっしゃていた方もいれば、むしろ採用という形で就活に関わっている方までいらっしゃいました。本当に色々な視点での意見が聞くことができ、それだけでもこの会に出て良かったと思います。

僕はこの本を読んでいて、特に男性陣のキャラクターそれぞれに自分に近しい部分を感じてしまって、読んでいて自分の痛さを見せつけられているようでちょっと心苦しさを覚えてしまいました(笑)。考え方的にはアーティスト気取りの隆良に近いところがあるし、世の中を斜に構えて見ている感じは主人公の拓人に通じるところもあるし、後先考えずに行動して失敗するあたりは光太郎に似ているところもあり、全体的にキャラクターの痛々しさに自分を重ねてしまって、なんとなく苦笑いをしながら読んでいました。この辺りの人物描写はさすが朝井リョウって感じですね。就活の話とだけは聞いていたので、課題本読書会では、自分が某人材会社に対する悪口を言ってしまうんじゃないかと謎の懸念を抱いていましたが(笑)、そんなことはなかったので安心しました。

色々と話は出てきましたが、個人的に面白かったのが素直系女子瑞月に関するツッコミです。この作品中ではほぼ唯一と言って良いくらい裏表のないキャラクターとして描かれていますが、その実結構腹黒いところがあるんじゃないかという指摘があり、人物描写自体にも主人公である拓人の偏見が入っているのではないかという話になりました(グループの中では、その偏見は「タクトフィルター」と名付けられました(笑))。

また、僕は未読ですが、スピンオフ作品である「何様」についても話題になりました。実は、参加者の1人が「この人はこうなるんじゃないか?」という形で予想して言っていたことが、そのまま「何様」で描かれていることが発覚し、その方の読みの深さに驚くという一幕もありました。今回「何者」を読んで朝井リョウさんの他の作品にも興味が出てきたので、本屋に行った時にでも探してみようと思います。

あとは、本の内容とは直接は関係ないですが、就活環境の変化についての話も出ましたね。おそらく、この本が書かれる少し前の、所謂就職氷河期はもっと厳しい就活競争だったでしょうし、人手不足の今であればここまで切羽詰まっていなかったんじゃないかという話にもなりました。SNSの使い方なんかもそうですね。この頃はSNS黎明期で、Twitterでも綺麗な自分を演出することに専心する人が多く見られましたが、ここ最近はもう少しまったりというか、弱い部分をも曝け出す場にもなっているんじゃないかという意見もありました。

やはり、SNSや就活、自己実現など比較的身近なテーマを扱っているだけに、会としてもなかなか盛り上がったのではないかと思います。次回の課題本は北川恵海さんの「ちょっと今から仕事やめてくる」ということで、就活の話をしたと思ったら仕事を辞める話になるという、なかなか面白い流れです(笑)。どちらも投票で決まった本なので、皆さん普段の「仕事」に対して悩む部分も多いからこそ、このようなチョイスになったのかも知れませんね。

これまでのように、近日中にこの「何者」についてのコラムを彩ふ文芸部のサイトに投稿予定です。

2020/01/31 投稿しました!
【読書コラム】何者 - 就活という物語の交叉点 執筆者:KJ | 彩ふ文芸部

まとめ

今回は1/26に行われた彩ふ読書会についてのレポートを書かせていただきました。ここのところ毎週のように各地に参加していますが、とりあえずレポートを溜めずに書けているのは良い傾向だと思います(一方でコラムの執筆ペースが落ちているという事実はありますが…)

次回の開催日は2月9日(横浜)、2月23日(東京)です。どちらも午前は推し本披露会、午後の課題本読書会。課題本は横浜は村上龍さんの「コインロッカー・ベイビーズ」、東京は上述の通り北川恵海さんの「ちょっと今から仕事やめてくる」。先日ブックオフに行った時にどちらも購入しており、「コインロッカー・ベイビーズ」は早速読み始めています。分量的にも内容的にもなかなか重い本ですが、しっかり読み切って読書会に臨みたいところです。「ちょっと今から仕事やめてくる」は比較的ページ数が少ないので、割とさらっと読めそうですね。

そして次回の東京では約半年ぶりの飲み会を予定しています。午後の読書会から飲み会までの間は読書会の会場を開放してくれるらしいので(企画名:ヒミツキチ)、そこで参加者の方々と楽しめる企画ができると良いなぁと思っています。

東京・横浜共に募集は既に開始しているので、詳しい内容は彩ふ読書会のサイトから↓

東京
【東京】2020年2月23日(日)AM "推し本披露会" 開催のお知らせ | 彩ふ読書会
【東京】2020年2月23日(日)PM "ちょっと今から仕事やめてくる"課題本読書会 開催のお知らせ | 彩ふ読書会
【東京】2020年2月23日(日)夕方 "ヒミツキチ@STUDIO777" サークル活動のお知らせ | 彩ふ読書会
【東京】2020年2月23日(日)夜 "お酒で彩ふ交流会&課題本決定会" サークル活動のお知らせ | 彩ふ読書会

横浜
【横浜】2020年2月9日(日)AM "推し本披露会" 開催のお知らせ | 彩ふ読書会
【横浜】2020年2月9日(日)PM "コインロッカー・ベイビーズ"課題本読書会 開催のお知らせ | 彩ふ読書会

それでは、また!