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【読書】2020年1月に読んだ本まとめ

こんにちは!
今回は、先月一ヶ月間に読んだ本について記事を書きたいと思います。この一ヶ月で読んだ本まとめは、本を読むだけで満足したり、冊数を読むことに傾斜しないためにも定期的にやっている試みです。


読んだ本まとめ

一ヶ月に読んだ本は以下の通り。 f:id:KinjiKamizaki:20200201151736p:plain f:id:KinjiKamizaki:20200201151800p:plain f:id:KinjiKamizaki:20200201151830p:plain f:id:KinjiKamizaki:20200201151902p:plain f:id:KinjiKamizaki:20200201151921p:plain

総評

一ヶ月で読んだ本は41冊。その内訳は以下の通り。

- 小説・エッセイ → 5冊:国内3冊、海外(翻訳)2冊
- 自己啓発・ビジネス ・その他→ 40冊

12月の読書冊数は41冊。12月が44冊だったので、冊数としては先月に引き続き微減です。全体的に、軽めの本の読む量を減らして重めの本を増やすことを意識したので、割と想定通りの結果です。今月ぐらいが読書と行動のバランスが良かったと思うので、今後しばらくはだいたいこのくらいで安定させていければいいなぁとは思っています。

小説の量は相変わらず少なめにとどまっていはいるものの、比較的重いタイプの本が多かったことを考えると、そこまで悪いことでは無いと思っています。今まで小説を読んでいた時間を重めの哲学書を読む時間に当てているので、その分が減ったという面は否めませんね。ある程度仕方のない面はありますが、色々と考えながら試したいきたいところです。

また、今月は全体的に、興味を持った分野の本をすぐに手に取って読んだことが多かったと思います。具体的には哲学カフェの本だったり、NPO関連の本、編集関係の本だったりですね。興味をもった分野については、あまり深く考えずに楽天市場でカゴに入れる癖をつけると、きちんと継続できていいと思いました。ただ、経済的な負担は大きいのであまりやり過ぎは禁物ですね(笑)

今月のマイベスト小説&ビジネス書

毎月恒例となっていますが、その月で最も印象に残った小説・ビジネス書をご紹介します。

小説部門

1月に最も印象に残ったのは、韓国作家ハン・ガンさんの「少年が来る」です。

僕がハン・ガンさんの本を手に取ったのは、昨年の11月頃に読んだ「菜食主義者」以来の二冊目。「菜食主義者」もなかなかインパクトの大きい小説でしたが、この「少年が来る」も負けず劣らずの衝撃作で、久しぶりにもの凄い小説を読んでしまったなという気になりました。あらためて、ものすごい作家だなと。

内容的には、1980年に韓国で実際に起こった光州事件をモチーフにした小説で、そこで命を落とした人たちの様子、拷問を受けた人のその後の半生、現代から光州事件を振り返る視点などを通して、そこにある何かを伝えようとした作品だと思います。

僕は韓国の歴史についての知識はあまりなく、「光州事件」というものをこの小説で初めて知りました。その事件とは、当時の軍事政権に対して民主化を求めて蜂起した市民レジスタンスたちが、体制側の組織に鎮圧されたという事件。韓国の民主化を語る上では転機となる事件だったらしく、なかなか深い闇があるようです。一応、Wikipediaの記事も貼っておきますが、ナーバスな問題だけに、一面的な見方をしないようには注意したいところです。
光州事件 - Wikipedia

そこで行われていた真相は僕には判断できませんが、少なくとも筆者であるハン・ガン氏が伝えたかったことはなんとなくは伝わってきた気がします。この手の政治闘争的な物語だと、どうしてもどちらかに寄った立ち位置から政権を糾弾したり、逆にそれを擁護したりといったような視点になりがちですが、そのような意図はあまり強くは描かれていません。

むしろ、この本から伝わってくるのは命というものの醜さと尊さであり、言葉にならないようなただただ深い悲しみです。ここで言う「命の醜さ」というのは、拷問をするような人々の醜悪さというよりは、むしろ人間が生きるためには不可避の暴力性、この世界で居場所を占領し、命を維持するために他の命を犠牲にせざるを得ないという業(カルマ)のように感じます(先に紹介した「菜食主義者」は、 この辺りをさらに生々しく描いている印象です)。

僕は、文学とは「言葉にできない感情・想いを言葉によって伝えようとする試み」だと思っていて、この本はまさにそれを描いている小説だと感じました。直接的に想いを伝えている言葉は多くはないけれども、執拗に描かれる「寒さ」「ひもじさ」や世の中の「無慈悲さ」を通して、筆者が伝えたいであろう何かが伝わってきました。なかなか複雑な歴史を辿っている韓国だからこそ書ける部分もあるように思い、韓国文学というジャンルにももう少し手を出してみようと思いました。

ビジネス書部門

今月のマイベストビジネス書は鈴木健さんの「なめらかな社会とその敵」です。ビジネス書ではないですが、まあ良いでしょう(笑)。内容としては哲学や自然科学の観点から、近代が前提としている分割不可能な「個人(individual)」という概念に対して疑問を呈し、新たな貨幣・選挙・社会システムを提案する書籍です。もともとは、最近SF界隈で盛り上がっている「なめらかな世界と、その敵」という本をきっかけに知った本ですが、想像以上の面白さで読んでいてワクワク感がとまりませんでした(ちなみに、「なめらかな世界と…」はちょっと合いませんでした(汗))

その提案内容自体は、現代人の認識とはあまりに異なりすぎるため、すぐに現実に実装できるものではないのは明らかですが、数10年〜100年単位では現実味が帯びてくるような気もします。現代の社会システムの限界というのは、色々な本を読む中で僕自身も感じ始めていて、その後にくる世の中はどのようなものなのだろうというインスピレーションを激しく刺激されるような一冊でした。もちろん、それがどのような過程で移行がなされるかとか、現実的にそんなことが起こるのかとか色々と疑問点はありますが、一つの思考実験としては非常に強い興味を惹かれました。

何よりも、世の中で流通している言葉で言うならば「理系」と「文系」の区別などどこふく風で、色々な分野を横断的に考察しているのが素晴らしい。さながら哲学的SFを読んでいるかのような感覚です。最終章の冒頭で、哲学的SF作家の筆頭グレッグ・イーガンの「万物理論」の中の一節が引用されていることは偶然ではないでしょう(ちなみに、この「万物理論」はマイベスト小説の一つなので、それが引用されていて異常にテンションが上がりました(笑))。

原初生物における「細胞膜」の発生から、社会での囲い込みの概念である「所有」を見出したり、脳科学から近代を条件付ける「自由意志」の概念に疑問を呈したりと、理文どちらかの専門に偏っているだけでは見られない非常に興味深い視点が多かったのが印象的でした(後者については、もう一つのマイベスト小説・伊藤計劃「ハーモニー」に通じるところがあります)。まあ、とにかく読んでいて楽しい本でした。

また、本の中では明確に書かれてはいませんが、この社会システム(生態系)を実装することを考えると、近年注目されている「ブロックチェーン」と相性が良いのではないかと思いました。むしろ、「ブロックチェーン」の社会的意味を考える上で重要な書籍だと言えるのかもしれません。いずれにせよ、この辺りのことを考えるのは非常に面白いので、引き続き追いかけてみたい分野ではあります。

NPOとアイデア思考

哲学はあいかわらず色々と読んでいるわけですが、先月の読書のトピックとしては、NPO関係の書籍をいくつか読み始めたことと、1月後半にアイデア思考系の本を比較的多く読んだことですかね。

NPOに興味を持ったはっきりとしたきっかけがあるわけではないですが、哲学や思想関係の本を読む中で、個人と社会の関係というものを考えるようになったことが大きかったのだと思います。あまりはっきりした目的があるわけではなく、とにかく興味が出てきたからNPO関係の本をまとめて注文して読んでいる最中ですが、それが自分に役に立つのかはとりあえず脇に置いておくとしても、読んでみて良かったとは思います。

やはり、普段の生活の中で接点があまりない部分だけに、食わず嫌い・偏見を持たずにアクセスすることに意味はあると思いました。NPO自体は昔何度かボランティアとして参加したことはあるものの、その時は経営に関する知識もその社会的な役割や位置付けも理解しておらず、ただ空白の時間を埋めるための活動として見做してしまっていました(それはそれで意味がある行為だとは思いますが)。そのあたりの知識が少しはついてきた今、改めて参加するのもありかもしれないと感じています。何よりも、その実態を知りたければ、書籍だけではなく、現場を見ることが大事ですからね。

また、アイデア思考についても、なかなか得られることが多くてもうちょっと深掘りしたいところですね。というより、書籍だけではなく、しっかりと実践的な形で自分の周りの活動に取り入れたいです。僕自身はどちらかというと、論理的な思考を重視している左脳優位なタイプだと思っていますが、新たな価値を生み出すためにはそれだけでは十分ではないと思うので、こういった思考フレームワークをうまく利用して価値を生み出すやり方というのも学んでいきたいところです。

自分なりの道徳観・倫理観は大事にしながら、荒けづりでも良いからまずは世の中に出し、そこから得られる洞察をもとに再構築していくという気概は大事にしていきたいですね。

まとめ

今回は1月に読んだ本のことについてまとめてました。なんだかんだ、こうして振り返る機会を設けることで考えさせられることも多いので、これからも毎月継続していくつもりです。

それでは、また!