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【読書】2020年3月に読んだ本まとめ

こんにちは!
今回は、先月一ヶ月間に読んだ本について記事を書きたいと思います。この一ヶ月で読んだ本まとめは、本を読むだけで満足したり、冊数を読むことに傾斜しないためにも定期的にやっている試みです。


読んだ本まとめ

一ヶ月に読んだ本は以下の通り。 f:id:KinjiKamizaki:20200402002748p:plain f:id:KinjiKamizaki:20200402002805p:plain f:id:KinjiKamizaki:20200402002820p:plain f:id:KinjiKamizaki:20200402002835p:plain f:id:KinjiKamizaki:20200402002857p:plain

総評

一ヶ月で読んだ本は44冊。その内訳は以下の通り。

- 小説・エッセイ → 6冊:国内4冊、海外(翻訳)2冊
- その他→ 38冊

3月の読書冊数は44冊。2月は43冊だったので、冊数としては微増。3月はコロナウイルスの影響で休日にあまり外出できなかったことを考えると、ちょっと物足りない感じはありますね。まあ、これは少し読書以外に興味が出てきたことの影響でもあるので、そこまでネガティブには捉えてはいません。

先月読んだ本を振り返ると、ひと月を通して幾つかのテーマ性が見られるのが今月の読書の特徴だった思います。詳細は後の方で述べたいと思いますが、具体的には「空気」、情報社会論、そして哲学の総括系の本の三本の柱があるように見えます。そこまで強く意識したわけではないものの、少し傾向が固まりすぎている感じはするので、今月は積極的に少し違うジャンルに踏み込んでみてもいいのかも知れません。

今月のマイベスト小説&ビジネス書

毎月恒例となっていますが、その月で最も印象に残った小説・ビジネス書をご紹介します。

小説部門

3月に最も印象に残ったのは、一部でカルト的な人気を誇るアメリカ小説「ファイト・クラブ」。僕の最も好きな作家である伊藤計劃氏が生前好きだったと聞いていたこともあり、もともと気になっていた小説の一つで。その上で、以前某所に谷崎潤一郎の「痴人の愛」の読書コラムを投稿した時、それを読んだ方から「読んでいてファイト・クラブを思い出した」というコメントをいただいて、この本を読むことに決めたわけです。

原本が出版されたのは1996年で、筆者はチャック・パラニュークという作家。世界各地で熱狂的なムーブメントを引き起こした作品らしく、現代アメリカ文学を代表する作品と言えるのかも知れません。

内容としては、エリートアナリストとして全米を駆け回る主人公が「タイラー・ドーデン」という男と出会ったことをきっかけに、喧嘩組織「ファイト・クラブ」を設立するというもので、それをめぐるヒューマン・ドラマが展開されます。この「ファイト・クラブ」とは、お互いが体一つで殴り合うという身もふたもなく、野生的で動物的な活動です。

その規則は…
第一条 ファイト・クラブについて口にしてはならない。
第二条 ファイト・クラブについて口にしてはならない。
第三条 ファイトは一対一。
第四条 一度に一ファイト。
第五条 シャツと靴は脱いで闘う。
第六条 ファイトに時間制限はなし。
第七条 今夜初めてファイト・クラブに参加した者は、かならずファイトしなければならない。

この本については色々な解釈があると思いますが、僕が読んでいて感じたのは身体性から乖離した現代の苦悩と、それが解き放たれた時の開放感、そしてその限界についてです。この辺りは先日書いたエッセイでもかなり深く触れている部分ですが、秩序を生み出そうとする脳と秩序を壊そうとする身体の対立を描いていると言ってもいいのかも知れません。

全体的に僕の持っている問題意識に近いものを感じてしまって、そういう意味で刺さったというのが大きかったです。やはりというか、伊藤計劃氏が好きだったというのも納得の内容です。ここのところの読書コラムを読んでいる方であればなんとなくわかるかと思いますが、やはり「身体性」というのが時代のキーワードになっているのかなぁと。

この作品については映画にもなっていて、そちらの評価も非常に高いようです。やはり肉体というのがテーマになっていることがあり、確かに映像映えはしそうな感じはします。まあ、僕はNetflixやAmazon Primeの類は契約していないので、どうやって見ればいいのかはよくわかっていません(笑)

ビジネス書部門

今月のマイベストビジネス書は松岡正剛さんという方の「知の編集工学」です。この本は自分の興味に非常に深く刺さったということもあり、もしかしたら今年のマイベスト本になるかも知れないレベルでした。

その内容は「編集」や「知性」、「思考」という概念について多面的な角度から考察するというもの。言語学から情報工学、哲学や神話学、文学やAI論やコミュニケーション論などなど、幅広い分野を引用しながら「編集」について解説しています。僕の好きな本の傾向を見ていくと、このように色々な分野を横断しながら、そこから何か「本質」のようなものを見出していくタイプが多いですね(笑)

著者によると、編集とは「情報を集め、これを並べて、そこからいくつかを選択し、それになんらかの関係をつけていくという、この作業の全体」を表すということです。このように言われると「まあ、それはそうだろう」と思ってしまいますが、この概念を人間の多くの活動の本質として捉えているところが面白いところ。

あらためて眺めてみれば、執筆も作曲も、思索も探求も、年表をつくることも営業企画書をつくることも方程式をつくることも、それぞれが編集だったのである」という文章に示されるように、私達の殆どの行為が先程書いた「編集」の定義に当てはまっていることがわかります。こうして僕が今書いている文章も、膨大にある日本語の単語を的確に並べることでなんらかの意味づけを行おうとする行為に他なりません。

例えば、チンパンジーにキーボードを叩かせたとき、意味の通る文章を書ける可能性はゼロに限りなく近い(でもゼロではない)わけですが、人間がそれが出来るのはこの「編集」の力だと言えます。膨大な情報の中からなんらかの価値観を見出し、その切り口から物事を整理する力が「編集」なのです。だからこそ筆者は「生物は情報編集によってこそ進化してきた」と言っているのだと思います。

ここで紹介した以外にも、コミュニケーションや社会について、この「編集」という切り口から論じており、非常に刺激的で楽しく読めた一冊です。何となく、生命や知性についての本質を垣間見た気がしてしまいました。そこそこ難解な本ではありますが、興味がある方は是非読んでみてください!

「空気」について

冒頭にも少し書きましたが、先月読んだ本の多くに共通するキーワードは「空気」です。具体的には『「空気」の研究』『「超」入門 空気の研究』『「関係の空気」「場の空気」』『世間とは何か』あたりでしょうか(ちなみに同じく先月読んだ「空気の発見」は化学物質としての空気(Air)なので少しこれらとは毛色が違います(笑))。もともと問題意識を持っていた概念だけに、こうして短期間でまとめて読んだことは有意義だったかなと思います。

山本七平氏の古典的名著『「空気」の研究』に基づいて考えてみると、「空気」の正体とは、集団のによって知らず知らずのうちに規定される絶対的な前提条件とでも言えそうです。本来は客観的に捉えるべき物事を絶対不動のものとして捉えてしまい、それによって身動きが取れなくなってしまうというのがこの「空気」の弊害です。

ここ数年の僕は、現代日本の閉塞感というべきものの源泉は何なのか、そしてそれを打開するためにはどうすれば良いのか、ということについて考えていました。そんな中で、この「空気の研究」に書かれていた概念は、それを理解するための大きなヒントになったと思います(ちなみに、現時点でのこのテーマについて僕なりの考察が、先日書いた村上龍の「コインロッカー・ベイビーズ」のコラムです。)

個人的に厄介だと思っているのが、前提条件に対して疑問を投げかけることのタブー化です。言ってみれば、裸の王様に対して、裸であると指摘することへの忌避と言っていいでしょう。やはり、新しいものや面白いものはそれまでの価値観を否定するところから始まると考えているので、ここがタブー化されてしまえば、イノベーションが生まれないのも不思議ではありません。

本格的に語りだすと長くなりそうなので(笑)、ここではあまり深入りはしませんが、いづれにしてもこれについては今後も継続して考えていきたいと思います。いくつかの本にも書かれていたとおり、個人的には日本語という言語と他者認識が大きなポイントになってくるのでは無いかと疑っています。まあ、ゆるく考えていきましょう!

まとめ

今回は3月に読んだ本のことについてまとめてました。なんだかんだ、こうして振り返る機会を設けることで考えさせられることも多いので、これからも毎月継続していくつもりです。

それでは、また!