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【読書】2019年10月に読んだ本まとめ

こんにちは!
今回は、先月一ヶ月間に読んだ本について記事を書きたいと思います。この一ヶ月で読んだ本まとめは、本を読むだけで満足したり、冊数を読むことに傾斜しないためにも定例にしたいところです。


読んだ本まとめ

一ヶ月に読んだ本は以下の通り。

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総評

一ヶ月で読んだ本は52冊。その内訳は以下の通り。

- 小説・エッセイ → 6冊:国内5冊、海外(翻訳)1冊
- 自己啓発・ビジネス ・その他→ 46冊

10月も、9月に引き続き50冊超えです。これはこれで悪くないとは思うものの、冊数にこだわり始めると際限がないのと、重みのある本が読めなくなってしまうので、冊数の追求はほどほどにすべきですね。たくさん読むことが目的ではないというのは大前提として持っていますが、実際に数字として出てきてしまうと達成感に引きづられ、冊数の追求に向かいがちなので常々注意したいところです。

小説としては、珍しくそのほとんどが国内小説でした。普段は海外小説の比率が高いことが多いですが、たまにはこういう月があるのも悪くはないかなと。こうして改めて振り返ってみると、先月は人からオススメされた小説がほとんどでした。国内が中心だったのは、その影響があるのかも知れません。いま手元に積んでいる本は、海外小説ばかりなので、11月は海外小説が中心になると思います。

今月のマイベスト小説&ビジネス書

毎月恒例となっていますが、その月で最も印象に残った小説・ビジネス書をご紹介します。

小説部門

今月最も印象に残ったのは、村田沙耶香さんの「しろいろの街の、その骨の体温の」です!9月の「殺人出産」に引き続き、村田沙耶香さんの小説が月間ベストになりました。スタインベックの「ハツカネズミと人間」もかなり良かったので悩みましたが、個人的にはこちらの方が読んでいて印象が残りました。

内容としては、発展を続けるニュータウンを舞台に、主人公の女子中学生の生活を描く学園小説です。学園小説というと瑞々しい青春や友情のイメージがありますが、そこは流石の村田沙耶香。そんな綺麗なイメージなどどこ吹く風で、生々しい人間関係と思春期の抑えきれない情動をグロテスクに描いています(笑)。

スクールカーストという社会構造を冷静に眺めながら、そこに縛られて生きていかざるを得ない人間の苦しさ。そんな描写が非常に村田沙耶香さんらしいと思いました。彼女の小説に共通して見られる、ドライな眼と熱い情動が学園生活の中で効果的に描かれているなという印象です。僕の中での村田沙耶香さんのイメージは、暴走したエヴァ初号機の咆哮です(笑)

最近気づいたのですが、僕が好きな小説に共通することとして、クールに、そしてドライに人間社会というものを描きつつ、筆者のうちなる激情が描写されている(僕はこれを身体性の発露とよく呼んでいますが)、という特徴があるなぁと思いました。よくこのブログでも取り上げている伊藤計劃さんはもちろん、カート・ヴォネガット、グレッグ・イーガン、ハーラン・エリスンなんかはこの部類ですね。

とはいえ、彼女の小説の中では、なんとなくウェットな話だという印象はありました。激情を発露させつつも、最終的には人間のどうしようもなさを強調する形で終わっている作品が多い中、この小説では「一般的な意味」での人間や愛の肯定がなされていたように感じます。そういうこともあって、現代の「世間の価値観」の転覆を図ろうとする村田さんの小説としてはちょっと珍しいなぁと。

これは僕の邪推にすぎませんが、この小説自体が村田さんの過去の経験と結びついており、当時の感情が多少作品の結末にも影響を与えているのではないか、そんなことを考えてしまいました。スクールカースト自体を馬鹿馬鹿しいと考えつつ、それでも上位層に対する憧れを抱いてしまう、といった感情でしょうか。そういう意味で、村田沙耶香さんの普通の人としての一面も見られたと言えるかも知れません。

この本についても、そのうちコラムを書きたいところです!

ビジネス書部門

今月のマイベストビジネス書はスタンレー・ミルグラムの「服従の心理」です。「アイヒマンの実験」と呼ばれる有名な心理学の実験について書かれた本で、そのテーマは「人間は権威の名のもとで、どこまで残酷になれるのか」です。

実験の内容をざっくりいうと、被験者は「教師」役の指示にしたがって、「生徒」役の人がクイズに間違えるたびに電気ショックを与える、という実験です。実は「教師」も「生徒」もサクラなのですが、「生徒」の痛みの演技を聴きながら、「教師」によって更に強い電気ショックの指示を与えられた時、被験者がどこまで強い電気を「生徒」に与えられるのか、を観察しています。
(実験についての詳細は下記のWikipediaの記事をご覧ください)

ja.m.wikipedia.org



その結果はご想像の通り、我々の常識を覆すものでした。というのは、ほとんどの人が「生徒」役の苦痛の演技にも関わらず、最大電圧まで出力をあげてしまったというものです。多くの人は、自分だったらそんな非道徳的なことはしない / できないと考えるかも知れませんが、実際は「教師」役の指示という権威のもとではひどく残酷になれてしまうのです。

僕は、この実験自体は他の書籍などで聞いたことはありましたが、それでもこの本は読んで良かったと感じました。特に印象的だったのが、実験後の被験者のインタビューです。「生徒」役の苦痛の叫びと「教師」役の罰の指示の間に立たされた時の葛藤や、最終的に「教師」に従ってしまった人々の話がとても生々しく、自分がこの被験者だったらと想像すると、背筋が凍る思いを抱いてしまいます。

この実験結果はあまりにも多くの示唆を与えていると思います。ナチスによるユダヤ人虐殺の実行者から始まり、戦争における兵士たち、身近な例だと某保険会社による高齢者を狙った悪質な保険商法。これらの根底にあるのは、人間の、権威に対する弱さだと思います。権威に指示されれば、普通に考えれば残酷この上ないことでもできてしまう。良い悪いはともかくとして、それが人間だということは良く良く理解すべきだと思います。

先の保険商法の報道がなされたとき、「なぜそんなに残酷なことができるのか」「自分だったら絶対にそんなことをしない」と思った方も多いでしょう。しかし、この実験の結果を見る限り、保険の営業パーソンが特別に悪意のある人間というわけでなく、ごくごく普通の人でも同じ状況に置かれれば不正をしてしまう。そういう現実を直視する必要があるのかも知れません。むしろ、自分は道徳的な人間であるという考えを持っている人にこそ、この本はおススメです。

あと、ここまでの話とは全然関係ない話ではありますが、この原典を読んで良かったと思う理由のもう一つが、実験設計に関する部分です。特に心理学においてはセンセーショナルな実験結果が出た時に、自分の都合の良いように結果を解釈しがちです。この本では、「アイヒマン実験」の様々なバリエーションを紹介しており、ベースとなる実験の結果の解釈の正当性について言及しています。

例えば、この実験結果に対して「これは権威の問題ではなく、人間の本来持っている攻撃性に由来するのではないか?」という反論を考えてみます。ミルグラムは、この反論を実証するため、「被験者が自由に電圧を決めることができる」という設定での実験も行っています。その結果は、権威に指示されていた場合に比べると、はるかに弱い電圧しか「生徒」役に与えませんでした。このことから分かるのは、「生徒」役に対して高い電圧を与えてしまったのは、人間の攻撃性に由来するものではなく、あくまでも「権威」の存在によるものと考えられるというわけです。

こういう実験設計を適切にする事で解釈の正当性を実証していく、という試行錯誤のプロセスは、原典を読まないとなかなか見えてこないことだと思います。そのプロセスを学ぶという意味でも、元になったこの本を読んだ価値は十分にあったと思います。

哲学の入り口

先月に読んだ本の傾向としては、哲学関係の本が多かったのが特徴です。本格的に哲学系の本を読もうと思ったきっかけは山口周さんの「武器になる哲学」を読んだこと。気になっていた本ではあるんですが、先月Kindle Unlimitedで読めることに気づいて読んでみたという訳です。(「武器になる哲学」自体は流石にサブスクリプションで読むのも申し訳ないと思ったので、紙の本も買いました)。

読書を本格的に始める前の自分から考えると、自分が哲学書を楽しんで読んでいるという今の現実はちょっと信じられません(笑)。以前の自分は、基本的な哲学書すらも読んでおらず、むしろ哲学をちょっとバカにしていた節のあったことを考えると、確実に成長はしているなぁと思います(笑)。実際に読み始めてみると、その思考の過程が非常に刺激的で面白い!

また、自分が今まで考えていたような内容を、過去に誰かが整理して哲学としてまとめているという事実は心強くもあります。特にニーチェの思想や構造主義なんかは、言葉としては明確に知っていた訳ではなかったものの、自分の知らないうちに強く影響を受けていると感じました。

「武器になる哲学」の最後にオススメの哲学書リストがあったので、まずはこのリストからさまざまな考え方についての哲学書を読んでいくつもりです。実は、上記で紹介した「服従の心理」もこのリストで紹介されていた本の一つだったりします。この本自体は哲学というより心理学の本ですが、哲学が人間や社会に対して考えるものである以上、ある意味では心理や脳科学などとは不可分なのかも知れません。

いずれにしても、しばらくは哲学書を頻繁に読んでいきたいと思います。

まとめ

今回は10月に読んだ本のことをまとめました。やはり、読みっぱなしにするのではなくこうした形で定期的に自分の読んだ本を振り返る機会を設けることはなかなかいいですね!

それでは、また!