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【読書】2019年8月に読んだ本まとめ

こんにちは!
今回は、先月一ヶ月間に読んだ本について記事を書きたいと思います。この一ヶ月で読んだ本まとめは、本を読むだけで満足したり、冊数を読むことに傾斜しないためにも定例にしたいところです。


読んだ本まとめ

一ヶ月に読んだ本は以下の通り。

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総評

一ヶ月で読んだ本は49冊。その内訳は以下の通り。

- 小説・エッセイ → 8冊:国内4冊、海外(翻訳)4冊
- 自己啓発・ビジネス ・その他→ 41冊

7月は45冊だったので、冊数としては引き続き微増。今回は、最近あまり読めていなかった小説をたくさん読めたので、かなり満足度が高いです。

8月の特筆すべき要素としては、やはり夏休暇があったことでしょう。最近は、休日も読書会の参加やその準備、ブログ(主にコラム)の執筆や各種企画でバタバタしていましたが、休暇中はかなりゆったり過ごすことができたと思います。おかげで、読みたいと思っていた小説を色々と読むことができました!

今月のマイベスト小説&ビジネス書

毎月恒例となっていますが、その月で最も印象に残った小説・ビジネス書をご紹介します。

小説部門

今月最も印象に残ったのは、伊藤計劃氏の「メタルギア ソリッド - ガンズ オブ ザ パトリオット」です!先月の「三体」から読み続けてきた中華系SFはどれもが質が高く、それぞれ今月じゃなければ月ベストになっていてもおかしくないレベルでしたが、やはり伊藤計劃の作品は圧倒的でした(「虐殺器官」は再読なので選考外としました)。

タイトルを見ればわかる通り、この小説は有名ゲーム「メタルギアソリッド」シリーズのノベライズ作品です。このシリーズの監督の小島秀夫監督が伊藤計劃さんと交流があり、監督が直々にノベライズを依頼したとのこと。伊藤さん自身もこのゲームの大ファン(20年来の!)であり、その熱量が小説の文章の節々から伝わってきます。

ゲームの大ファンであるだけに、どのように小説化するかは伊藤さんもだいぶ悩んだようですが、心理描写や世界観設定の説明の分量がノベライズとは思えないほど多く、ゲームの文章化を超えたものを感じました。伊藤計劃が語る、もう一つの「メタルギア・ソリッド」って感じです。

とはいえ、僕はこのゲームシリーズは未プレイなので、どこまでの設定がオリジナルなのかはわかりません。それでも、テーマ設定や問題意識、込められたメッセージ性は「虐殺器官」「ハーモニー」と地続きのものであり、これは間違いなく伊藤計劃の描く物語だと思わせる何かがありました。

この小説の語り手は、ゲームの主人公であるスネークのサポートエンジニア・オタコンなのですが、その設定が秀逸です。スネークの背中をずっと見つめ続け、そのサポートをするオタコンという存在はまさに、ゲームプレイヤーとしての伊藤計劃氏と重なる部分があったのでしょう。特に、最終章の読者に向けたオタコンの独白では、完全に伊藤さんの素が出ているように感じました。

「ただ生きること。誠実に、他者を尊重しつつ、自分の信念を生きること。」

少なくとも、読者に対するメッセージ性に関しては、ご自身のどの物語よりダイレクトに描かれていると思います。未プレイのゲームのノベライズということで今まで未読だったわけですが、なぜ今まで読んでこなかったのだと思ってしまいました(笑)。

それと同時に、これで氏の小説作品は全部読み終わってしまい、もうこの人の新しい作品を読むことが出来ないということに、一抹の寂しさも感じます。それだけに、とある人物が最終章でスネークに対して放つ言葉にグッときてしまいます。

「その目で、外の世界を見ろ。その身体も、その心も、お前のものだ。私たちのことは忘れて、自分のために生きろ」

勿論、このセリフはそのような意図を持って書かれた言葉ではないと思います。しかし、ご自身の死期を薄々感じていたからこそ、このような表現をとったのではないかと邪推してしまいます。500ページ程度とボリュームのある作品でしたが、読んでよかったと改めて感じました。

ちなみに、今回読んだテッド・チャン氏の「あなたの人生の物語」とケン・リュウ氏の「母の記憶に」はどちらも中国にルーツを持つアメリカ作家のSF短編集なのですが、収録されている作品のいくつかには、伊藤さんと同じような問題意識が描かれていると感じました。だからこそ、中華系SFというものに興味を惹かれるのかも知れません。

ビジネス書部門

今月のマイベストビジネス書は宇野常寛氏の「母性のディストピア」。ビジネス書かどうかという話はもういいですね(笑)。内容としては現代日本アニメーションの巨匠達についての評論です。具体的には宮崎駿(ジブリシリーズ)、富野由悠季(ガンダムシリーズ)、そして押井守(パトレイバーや攻殻機動隊シリーズ)についての話が全体の7割程度を占めています。

以前ここでも紹介した同氏の「ゼロ年代の想像力」でも少しだけ言及のあった、戦後日本のメンタリティとしての「母性のディストピア」。この構造についての解説と、その文脈をベースとした3人の映像監督の批評がメインの内容です。

社会的に父親性を獲得できなかった男性が、女性を守るという形で極めて個人的な形でその欲求を充足させようとする一方、女性は肥大化した母性によって男性を独占しようとし、社会へのコミットを妨害する。こうした共依存的な関係によって、個人と社会のつながりが希薄化してしまう、というのが宇野氏の言う「母性のディストピア」の構造です。一時期話題になった「セカイ系」と呼ばれる作品群が、端的にこの構造を表していると言っていいでしょう。

個人的に面白いと思った指摘は、「飛ぶ」ことに憧れを抱いていた宮崎駿に関して、ジブリ作品に登場する女性主人公は自由気ままに「飛ぶ」(ナウシカや魔女の宅急便)にもかからず、男性主人公は母性(女性の庇護)の下でしか「飛ぶ」ことが出来ない(ラピュタ、紅の豚、風立ちぬ)というものです。これは、女性の庇護の元でしか自己実現することが出来ないという「母性のディストピア」の構造に他ならない、という主張は「確かに」と思わされてしまいます。

これに限らず、有名なアニメーション作品群から戦後日本のメンタリティを解き明かす、宇野氏の批評は読み応え抜群です。比較的最近の話題として、2016年に話題になった三つの映画「君の名は。」「シン・ゴジラ」「この世界の片隅で」についても言及もあり、それもなかなか興味深いです。

そして、これらの作品評を踏まえた上で、「母性のディストピア」をどう突破するべきかについての言及があるあたり、ただ批判するだけの存在ではないという氏のプライドが見えて良いと思いました(実際、Planetという雑誌を出していたり、コミュニティを立ち上げたりと、口だけで批評をするだけの批評家とは違い、自分で行動しているところにこの人の魅力があると感じます)。

アニメーション作品に興味があるかたも、そうでない方も、なかなか思うところがあるのではないかと思う本なので、個人的にはおススメです!

電子書籍、はじめました

サブタイトルの通りですが、8月からKindle Unlimitedに加入し、本格的に電子書籍を読み始めました。もともと紙の本に対する強いこだわりがあったわけではないのですが、今まではなんとなく電子書籍には足を踏み入れていませんでした。しかし、ちょうど今月、それなりに長期間の海外出張が入っていたこともあり、この機会に導入したというわけです(荷物を減らしたいので)。

結論からいうと、今のところは非常に快適に使えています。荷物がかさばらないというメリットは大きいうえに、Kindle Unlimitedであれば定額で読めるので、僕のように短時間でたくさん読むスタイルの人にとっては経済的な意味でもいい感じです。Twitterの読書垢でKindle Unlimitedを使っている人も多く、無料配信されているもののうち良質な本の情報が手に入りやすいのも助かります。

あとは、電子書籍の質感ですね。これは賛否色々あるようですが、個人的にはいい感じの滑り具合で読めています。液晶だと文字が「滑る」という感覚は分かる人は分かると思いますが、早すぎず遅すぎず、ビジネス書などをサラッと読む際に非常にちょうどいいスピードで読み進められています。逆にある程度じっくり読むタイプの本は読みにくいのかもしれませんが、その辺りはやりながら調整といった感じですね。

とはいえ、今のところすべてを電子書籍で読むつもりはなく、当面は半々か紙:電子=7:3くらいになるんじゃないかなという気はします。電子書籍化されていない本も多いですし、ブックオフでなんとなく気になった本を手に取ることも多いので、うまく使い分けていきたいですね。Kindle Unlimitedだと、どうしても無料の作品に流れてしまいがちなので、変な偏りをださないためにも、紙の本も併用していくつもりです。

まとめ

今回は8月に読んだ本のことをまとめました。やはり、読みっぱなしにするのではなくこうした形で定期的に自分の読んだ本を振り返る機会を設けることはなかなかいいですね!

それでは、また!